まえがき
品質マネジメントシステムの国際規格ISO 9001は、2022年末時点で、世界全体で126万5216件もの登録があり、あらゆる産業分野に汎用的に適用されるものとし、国際交易を高める仕組みに組み込まれ拡大しています。日本に目を向けてみますと2024年2月7日時点で、2万2644件の認証取得組織があり、医療及び社会事業の分野では321件が取得しています。
臨床検査室の品質マネジメント規格である ISO 15189 は、 2024年2月7日時点で299の検査室まで登録数が増加しました。規格発行から数年後より、診療報酬上のインセンティブや、がんゲノム医療連携施設の施設要件などにも位置付けられ、もはや高度な医療を提供する施設においては、認定取得は標準的な状況と表現しても過言ではない時代となっています。
2018年に施行された、「医療法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令」と共に、臨床検査技師等に関する法律施行規則の一部改正によって、臨床検査に関する標準作業書、作業日誌をはじめ様々な記録の作成が求められるようになり、ISO 15189の認定を受けていない医療機関においても、臨床検査の品質を確保するための取り組みを求める環境に大きく舵が切られています。
ISO 15189 の認定を受けている検査室では、次の様な文書化された手順の策定などが規定されており、組織が是正活動に対していつでも途切れることなくスムースに対応していく体制ができています。
- 臨床医(臨床検査サービスの利用者)の要望(ニーズ)を評価し対応を決定
- 購買手順の開始
- 新規手順の妥当性評価
- 新規試薬の検証
- 標準検査作業手順書の作成
- 力量評価手順と評価様式の作成と実施(検査を適切に遂行できるかを確認)
- 検査手順と装置の点検表の作成(人材、機材の定期的な評価・校正)
- 臨床担当者へのお知らせ
- 検査案内書(電子カルテ等)の変更
- リスクマネジメントの継続的実施
これらの手順に基づく活動の中で、不具合(不適合:手順から逸脱したり、規格を満たさなかった事象)が起きれば、すぐに原因を特定して是正活動を行うためのPDCAサイクルが回っています。新型コロナ感染症に見られたパンデミックなどに対応するための突然の体制変更を行う場合にも、この認定検査室は、いつでも環境の変化に対応できる力量があり、施設のニーズに応えることのできる状態にあると言い換えることができます。一方で、認定を受けていない検査室でも、例えば経営会議や感染対策委員会などで議論され、適切な医療体制づくりに取り組まれ、経営方針に従った活動がなされているはずです。それではなぜ、あえて認定を受けるのでしょうか?